イマジン
「信じていたんです、そうすれば世界中から争いがなくなると本気で信じていたんです」
凛とした瞳で静かにそう語るオノヨーコさんの姿に感嘆や賞賛の気持ちを抱く前にただた
だ呆然とした。正に名曲「イマジン」の中の歌詞"君は僕を夢想家というのかな?"を僕
に思い出させた。ジョンレノンがビートルズという人類史上に輝くポップ/ロック(彼ら
はロックでしょ!だって体制や規制概念をぶち壊していたもの)グループで君臨していた
ころを思い出すのが難しいほどの変わりようを遂げたのは、彼の後妻のオノヨーコさんと
知り合ってから位からだという。ラブアンドピースの精神のもと、ベットでの全裸反戦メ
ッセージやいろんなものを削ぎ落としたシンプルな楽曲はアナーキーな形で世界中の若者
に知れ渡った。ただ実際にはそんな偉大なミュージシャンの過激な行動に遠巻きから眺め
るだけの傍観者のほうがほとんどだったと聞くが。
今年、クエンティンタランティーが審査員を務めたカンヌ国際映画祭でパルムドール(最
優秀作品賞)を獲得したのはマイケルムーア監督の「華氏911」だった。ブッシュを政
権から引きずり落とすための映画と監督自身が語るこの映画は、ネットでの一般投票審査
(IMDb)では平均6、5点である。これは皆が6点ぐらいとつけたわけではなく、全
ての答えが10点と0点しかいず、その平均点からである。
つまり徹底支持と、政治的な思惑のある映画だと批判した(まぁブッシュ支持のものたち
の妨害なんだけど)ものだけ。マイケルムーアがこの作品で言いたいのは一つだけである、
9.11のテロとイラクはまったく関係ないということ。これだけである。むしろテログ
ループのアルカイダを迫害していたのがイラクで、ブッシュはあのビンラディンを探すこ
とに兵士を最少人数にしていたという事実(イラク戦のために温存していたのだ)、アメリ
カでは9.11のテロの報復としてのイラク戦争だと思ってる人がほとんどだが(映画で
もブリトニースピアーズがバカそうな顔で語っている)、そんなものがどれだけ茶番かを暴
くための映画である。いやこれは映画という上質なフィクションではなく、実際に行われ
てる凶行を描いた悲劇のノンフィクションである。だからこれを映画としてうんぬんとい
う評価をするのは間違いである。
僕は、今、猛烈に感動している。もしかした偏執的な男が作った執念にも似たこのフィル
ムが、世界ナンバーワンの巨大国の歴史上もっとも愚かな大統領の愚行を止めることがで
きるかもしれないのだ。芸術が、いやもっと言うなら芸が多くの人間の命を救うのかも知
れない、そんな瞬間に立ち会えるかも知れないのだ。
年老いたオノヨーコはその深く刻まれた顔の皺をさすりながらインタビュアーの"なぜあ
のときジョンレノンは反戦運動を声高々に掲げていたのですか?"という質問に冒頭の言
葉を繰り返した。ジョンレノンが死んで今年でもう24年になる。僕らは想像することよ
り、実現していく痛快さを知ってしまっている。



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