FUN
FUN、言葉をそのまま直訳するなら"楽しむ"ということだが、日本では一般的に熱
狂的に応援する人たちなんていうところだろうか。僕はこのファンという言い方があまり
好きではない。"ダイノジファン"、そういう言い方があまり好きじゃない。"お客さん"
それでいい。ファンっていうのは自分の中に描いたダイノジじゃなくなったらすぐに手の
ひらを返す。それは僕らにとって自由ではないような気がする。。
アメリカで同時多発テロがあった5ヶ月後に「ダイノジといこう沖縄ツアー」が組まれ
た。このツアーというのは吉本のタレントさんとお客さんが一緒になって旅行に行ったり
するものだ。もちろんお客さんには少し割高で、温泉行ったりスノボー行ったり、海に行
ったりなんていうもので、素の芸人さんと近づくなんていうもので熱狂的なお客さんなら
大喜びの企画で好評を得ている。ダイノジ初めてのツアーは先輩のおはよう。さんやブラ
ザースさんや品川庄司君なんかと一緒にスノボーをお客さんとやるツアーに参加したりし
た。ところが僕はスノボーなんかしないでずっと部屋からでなかったりしてた。そしてお
客さんにどう接していいか分からなかった。お客さんに近く接すればいい人なんて言われ
たり、なんだか随分自意識過剰になってしまう。沖縄ツアーはテロの影響もあって7人し
か申し込みが来なかった。へこんだ、これには落ち込んだ。もう俺らはいるだけじゃダメ
な芸人なんだと知った。ただ当り障りのない話をしたり、いるだけで被写体になるような
存在ではもうないのだ。で、考えた。開き直った。徹底的に楽しませるのだ、と。2日間、
ずっと楽しませる、そんなツアーにしようと。群馬にある「珍宝館」という秘宝館で爆笑
のトークを展開するおばさんのエロ話(あからさますぎてこれが面白いのだ)を聞いたり、
深夜2時から広場でお客さん全員と円になってUFOを呼ぶ儀式をやったり(オチは自腹
で参加したチャイマの山本が焼きそばUFOをお客さんに配るという非常にくだらないも
の)、各部屋訪問も他の芸人の皆様なら5分くらいのを30分以上かけたりして、お客さん
のパーソナルな部分を聞いてびっくりしたり(お客さんの意外な面が見れる、これが面白
い)、早朝5時からラジオ体操しながら朝日に向かって反町の「POISON」をみんなで
斉唱したり。ともかくお客さんも含めてミニコントを延々2日間やるつづけるようなもの。
芸人の睡眠時間は30分。はっきり言って死ぬ。でもお客さん、みんないい顔してんだ。奇
麗事でもなんでもなく、それだけで疲れが吹っ飛ぶ。俺らを見てキャーなんてない、でも
全然いい、笑ってくれてるし、最後にはありがとうなんて言われたり。うん、これだけで
いいじゃんって。自分がいいと思う笑いだけをやりたいっていうのもあるけど、根っこで
は人を楽しませるっていうことが好きなんだろうなぁって。もしかしたらお客さんと近づ
きすぎるのでヨゴレなんていう人もいるかもしれない。でもこれはお客さんがお金を払っ
てきたんだから、その分しっかり笑わせ満足させ帰す、芸人として当たり前の行為だと迷
いながらも思ってる。芸人も含めて、お客さんも含めて、その時間が本来の意味であ
る"FUN"であればいいのだ。僕はお客さんとはそう向き合いたいと思ってる。



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