「COYOTE」と「OUT」
日本のシンガーソングライター二人の大傑作がリリースされた。
一枚は
佐野元春「COYOTE」
もう一枚は
小谷美紗子「OUT」。
完成度の高さ、そして現代の日本の音楽シーンの中での立ち位置としての的確さに震える。
そうわきまえているんだ。(こう書くとなんだか攻撃的じゃにように思えますが、それがどれだけ攻めの姿勢かというのは、このアルバムを聴いてもらったら分かります)
一枚目佐野元春「COYOTE」は、i-TUNEで購入したのだが、コンセプトアルバムというのが、本人による曲解説で分かった。
これは特典のようなものであった。
現代を荒地に例え、その荒地を生き抜く、コヨーテという男の物語。
コンセプチュアルにすることで、佐野元春氏の叙情的的なようなソングライティングが、ある種のまとまりを持つ。
この狙いは完璧に芯を捉えたホームランである。
最近、ボブディランのDVDをよく見直すのだが、スタイルとか唄い方とかそういう意味あいだけじゃなくて、もっとイメージにあるもの、漠然とした全体像として、オレはやっぱり日本でディランっぽいなぁって思うの佐野さんだけだ。
それは社会的な警響を鳴らしているとか、詩的に個人の関係性を描くとか、そういうことじゃなくて、実はこうこうこういう歌にはこういうアレンジでとか、こういう曲の後にはこういう曲があってとかアルバムにおける製作的なものでもあるのだが。
「コヨーテ、海へ」という曲はランニング中に聴きながら少し涙が出てきた。
それはこの曲だけが秀逸というより、ここにいたるまでの過程が最高なのだ。
そういえば僕はコンサートに行って必ず泣くところがある。
それが佐野さんのコンサートでの「SOMEDAY」という曲にある、”手遅れと言われても 口笛で答えていたあの頃”というフレーズのところ。
全然こんな感じの青春時代(むしろオレは真面目だったからね)ではなかったのに、なぜだかここでグッと来てしまう。
ロックというものは嘘を共有するコミニケーションであるなら、これこそが僕にとってはリアルな風景描写なんだと思う。
このアルバムではGREAT3のメンバーや元プレイグスの深沢さんやGROOVERSの藤井一彦氏がバックをつとめているそうだ。
楽器のリズムが全て心地いいというのが、何より無理がない。
歌の世界の邪魔をしていない。うるさくない。
完成度が高いんです。
ある種の深みを感じさせるこのロックアルバム(絶対断言)こそ、これからの日本のロックンローラーの晩年の新しい指針にもなると思う。
サンボマスター、エルレガーデン、ストレイテナー、バンプオブチキン、今の日本のロックバンドに人生を支えられた人にも聴いてもらいたいアルバムです。
そして小谷さん。
最近、ペドロアルマドバルの映画なんかを見直したり、「プラダを着た悪魔」を観たりと、なんだか女の物語を痛切に考える時間が多かったのだが(で、だした結論が女性は基本的にMであるだって、単純だねオレ)、むきだしの女の究極の世界が丁寧に反映されております、このアルバムには。
鹿野淳氏が「椎名林檎より椎名林檎然としてる」みたいなことをレビューに書いていたわけですが、椎名林檎氏が作為的にそれを作ってきたなら、彼女はむしろそれを天然で、真摯すぎて狂気へと転化できたのではないのかなと。
僕はデビューしたばかりの荒井由美さんを思い出しました。
このアルバムの感想は長く長く「ぴあ」の連載で、赤裸々な僕の体験も元に書かせてもらいました。是非読んでみてください。
大谷ノブ彦へのメール




最近のコメント