JETで生きろ!
「武道館芸人」
2007年、
僕は日本武道館のバカでかいステージに立った。
夢ってかなうね。だって武道館のステージなんてそうそう立てるもんじゃない・・・
はい、そうです・・実力じゃないのです(笑)
でも2回だよ。一年で2回立ってるんだよ。すごいぜ。
一回目はオーストラリアのバンド我らがJETの日本武道館公演のアンコール「ARE YOU GONNA BE MY GIRL」で共演したとき。
エアーギターに便乗、便乗。
私の相方大地がエアーギター世界一になったのは2006年の夏のこと。
仕事のなくなった僕がたまたま紹介(ロッキンオンの兵庫さん)でDJを始めて、
そこで大地さんに前で踊ってもらったときの演出のひとつが当時流行っていた
エアーギターだった。
それで大晦日、年末のフェスの大舞台でDJをやることになった。
藁にもすがる思い。仕事のない俺らの逃避の先。
爆発的に受けた。
3000人くらいの人の前で1時間何かをやるってことがなかったからさ。
勘違いしたね。
俺ら売れる!って(笑)
そんとき以前番組ゲストで出演していただいたAIRさんが僕らのDJで
飛び入りしてくれて、曲に合わせてエアーギターをしてくれた。
「みなさん!これが本当のエアーギターです!」
いやぁ・・こんなうまい言葉出てこなかったねぇ(笑)
そういう面白いフレーズが咄嗟に出ないところに伸び悩む所以があったりして。
舞台から降りて思い出して悔しくなったりして。
それから大地さんが今度は誘われてサマーソニックの中で開催されたエアーギター大会で素人の部から出場して、あれよあれよと勝ち続け、気づいたら無敗のまま優勝してしまったのだ。
すげぇぞ大地さん!!!
そんときのエアーギターの曲がJETの曲「ARE YOU GONNA BE MY GIRL」、日本語にするところの”俺のオンナにならないか?”
トラのセーターのデブがそれに合わせて踊るから非常にコミカルに写ったんだろうな。
それでJETの武道館公演のステージにゲストで出演してくれとオファーがあったのだ。
これってビートルズにドリフターズのようなものか?
前説ね。よしよし。
当日はタクシーでワーナーのスタッフさんが九段下まで送ってくれて、いろんな外国人アーティストの裏話をしてくれたりして。
マイケミカルロマンスが川崎のチッタでワンマンライブをやったときも
日本大好きの彼らはリハーサル前にフラッと外出しちゃって行方不明、結局本番ギリギリに見つかって事なきを得たとか、
(彼らは実はとてもナイスガイのいい奴等でひたすら謝罪しまくりだったとか)
ケミカルブラザーズが日本のラーメンが異常に好きだとか
(なんとこの後、僕らは関西テレビの仕事でケミカルブラザーズと一緒にラーメンを食べることになるのですが(笑))、
GREENDAYの初来日のときの話とか。
お喋りしながら段々リラックスしていくのが分かる。
考えてみたら武道館で一番最初にコンサートをしたのはビートルズ、でなく、ドリフタ―ズだったのだ。
あれ確か前座がドリフターズで、軽いコントみたいなのやって、故いかりやさ長介さんが最後「逃げろ!!」って言ってはけていったのだ。俺らも大ブーイングが起きたら、こんときのドリフのように逃げるだけだ。
着いてからなぜかJETのメンバーと対談企画があって。
いきなりドラムのクリスに
「DJやっているやつとか本当にムカつくよ」
ってかまされて(笑)
そういえば本編最後の曲も「ROLLOVER DJ」、
直訳するところの“DJをぶっとばせ”(笑)
DJからエアギターをやったとは言えなかった。
ボーカルのニックにいたっては俺らに一切話しかけない。
・・・・・怒っているのだろうか、ますます怖くなった。こちとら外国人とこんなに長く話したことだって初めてなのだ。ふわふわした気持ちになってた。
簡単なリハーサルをやっていよいよ本番。
リハのときもニックは一切笑わない。
俺にいたっては帰りたい気持ちになってきた。
ライブが開演した。
ライブのほうはこれが意外と言っては失礼だが、本当に最高だった。
エッジの立ちまくった、
でも大文字のロックバンドのスケールを兼ね備えた稀有な
バンドじゃねぇかって。
JETは同時期のロックンロールリバイバルバンドであるリバティーンズやストロークスらに比べると、田舎くさい懐古的なバンドのイメージがあった人も多かったと思う。
僕自身も完全に一発屋だと思っていた。
ところが武道館公演の一年前のフジロックでその年のベストアクトに
選ばれるほどの素晴らしいライブを披露して、
JETの新曲むちゃくちゃいいぞと一気に噂がたった。
果たしてアルバムは強固なリズム隊の圧倒的なグルーヴ感に、抑制の効いた素晴らしいメロディが栄える大傑作だった。このアルバムはニックとクリスの亡くなられたお父さんに捧げられたアルバムで、小さなころから母子家庭で育った俺にとってはとても沁みるアルバムだった。
僕らはこのアルバムのCMにも出演した。
信じられないくらい真面目にロックンロールを追及する彼らの作品を何度も聴いた。
さすがAC/DCを生んだあのオーストラリアを今代表する、
辛口のOASISもすぐに認めた本格派ロックンロールバンドだ。
本編が一旦終了してからアンコール一曲目。
俺らの登場だ。アンコール一曲目の「ARE YOU GONNA BE MY GIRL」のイントロが鳴った瞬間、武道館のあちらこちらで歓声・悲鳴が鳴り響いた。
腹の下の鳩尾がカーッと熱くなるのが分かった。
俺らの出番は2番のイントロ、メンバーの後ろから登場するものだ。
えっ?それってものまね番組のご本人登場の間じゃん!?台本を最初に読んだときひっくり返った。ちょっとちょっと誰がこんな台本書いたのよ!怒るよメンバーが!
「メンバーです」
レコード会社の人が冷静に言う。そうJETがこのきっかけで出てくれって言ってきたのだ。俺はメンバーに物まね王座のビデオを見て説明してあげたかった。日本では本物は2番から出てくるんだって。
この最高のタイミングに一番のバッタもんが本人面して登場するのだ。
間違いなくブーイングだ。
最悪大地は分かる、彼はエアーギター世界一位だ。
俺は?
はっきり言ってこの場に不必要な人だ。
ダイノジのエアーギターじゃないほう。
ブーイングがあるとした全て俺にだ。
1万人のブーイングを受け入れる勇気、俺にはない。
申し訳ない気持ちいっぱいで恐る恐る舞台へ飛び出した・・・・
大げさでもなんでもなく舞台が揺れた。
端から端まで全員が両手を挙げ、俺らを迎え入れてくれた。
スタンディングにしたアリーナ席でダイブが発生した。
俺らダイノジの登場は間違いなくこの日最高の盛り上がりを見せたのだ。
俺は思った、“売れた”(笑)
そうすぐにこう思う。
我を完全に忘れた。浮き足だった。
気づいたら俺は大地と二人でうなずいて大きくジャンプした(笑)
今までやったことのないかっこよさげな感じ。
完全に勘違いした。ジャンプが決まり着地したとき
俺はボーカルのニックに大きく被っていた(笑)
俺の体に隠れていたニックはひょこっと顔をだして、ニカッと笑った。
俺にはそれがOK,OKと言っているような気がした。
楽屋に戻って、JETが帰って来るのを待った。汗だくで楽屋に戻ってきたJETの姿は美しく危険なロックンローラーのそれだった。
キースリチャ-ズが言う「なんでみんなロックばっかり言うんだ、ロールが足りてないんだ」という言葉が浮かんだ。
こいつらは違う。本物のロックンロールバンドなんだ。
俺は思い切ってクリスに俺はDJやっているんだと告げてみた。するとクリスはOK,OKと手で作って笑った。
するとニックがこちらにやってきた。ヤバイ!完全に怒られる!バンドのメインのボーカルに被るという大大大失態。
ニックは大きな声で言った。
「ナイスセーター(スウエーター)!!」
いや、セーターかい!
漫才師である自分がジェットのスピードで突っ込んだ。
ちなみに武道館もう一回は吉井和哉さんの武道館公演の前説。
これがまたすごい。
取材で俺らがふかした。
「吉井君も忙しそうだから、カレーでも奢ってくれたら前説やってやるよ」
そしたら吉井さんオファーしてきた。
みんな口は災いの元だ。
でも夢は叶う。
なんか普通に叶うもんなだよ。




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